500Eとはいかなるクルマか?

 1990年10月、500Eは発表された。ボディはいわゆるW124をベースにしながら構造に大幅な変更を加え、エンジンは119型5リッターV8を搭載したメルセデス・ベンツ“純正”のモンスター、キング・オブ・メルセデスであった(過去形)。
 500Eはポルシェ社のエンジニアの手により構造と材質を一新し、初期モデルはポルシェ社の製造ラインとメルセデスの工場を往復して一日12台のペースで組み立てられた。エンジンは当時未発売の500SLと同じ119型、ブレーキキャリパーはブレンボ、トランスミッションは基本的に4速AT、LHDのみ、トラクションコントロールASRとABSが標準装備され、ドライバーの技量 にあまり関係なく高い安全性とパフォーマンスを発揮することが可能である。容量 を増した触媒と排気管を納めるためにフロアトンネルが拡大されそのため乗車定員は4名だが、室内空間やトランクルームは300Eなどと同様十分な実用性を持っている。
 500Eの、他のW124との外見上の違いは最小だ。ワイドフェンダー、ドライビングランプと一体のヘッドライトとフロントバンパー下のプロジェクターフォグランプ、そしてトランクリッドのエンブレム。しかし、一見しただけでその醸し出す雰囲気が異なるのが判る。乗ればさらに違いが判る。このクルマはエンジンを拡大しただけと思われがちだが、ポイントは足まわりにある。日本には正規輸入は92年モデルから導入され、93年モデル以降燃費改善のためにエンジンマネジメントの変更を受け若干パワーダウンを強いられた(日本では100ps以上は5ps単位 の表記である)。94年モデルはフロントグリルの変更・ホワイトウィンカー・ボディ同色バンパーなどにより外観の印象を変えるとともに正式車名をE500としこのモデルで正規輸入は終了、95年には17インチホイールを履いたリミテッド(日本への正規輸入は無し)が投入され、96年以降は本社の方針でE500の後継車はAMGに任せることになり生産を終了した。500E/E500の日本への正規輸入は3年間で1000台弱、アメリカへの正規輸入は3年間で1505台。並行輸入車両が現在では極めて多い。

主要所見

全長×全幅×全高 4755×1795×1410mm ○ホイールベース 2800mm ○トレッド:(F/R)1540/1530mm ○車両重量 1700kg(サンルーフ無し) ○エンジン型式 119型 水冷V型8気筒DOHC32バルブ ○ボア×ストローク φ96.5×85.0mm ○総排気量 4973cc ○圧縮比 10.0 : 1 ○燃料供給 ボッシュLH ジェトロニック ○最高出力 330(326)ps/5700rpm ○最大トルク 50(49)kgm/3900rpm ○燃料タンク容量 90リットル(リザーブ11.5リットルを含む) ○10モード燃費 5.4km/l(92モデル、93以降は6.2km/l)○トランスミッション形式 4段AT ロックアップ機構付き ○変速比 3.871、2.247、1.436、1.000 バック 5.59 ○最終減速比 2.824 ○ステアリング形式 リサーキュレーティングボール ○サスペンション F マクファーソンストラット+コイル/スタビライザー R マルチリンク+コイル/スタビライザー(レベライザー装備)○ブレーキ F/R ベンチレーテッドディスク F 対向4ポッド R 対向2ポッド ABS ○ホイール・タイヤ F/R 8J×16 225/55ZR 16 ○その他の装備 トラクションコントロール:ASR アクセル開度・燃料噴射量 ・点火時期・さらにリヤブレーキまでコントロールする(当時は)優れモノ ○ボディカラー ○新車時価格(1992)1551.0万円 ○かつての中古車相場 ○発進加速 0-100km/h 6.1秒(メーカー発表値)/6.6秒(テスト値) 0-400m 14.7秒 0-1km 25.6秒 ○追い越し加速 60-80km/h 1.5秒 120-140km/n 2.8秒 200-220km/h 7.4秒

主要所見を見ただけでもどのような性格のクルマかある程度想像できよう。全長は長い。車幅はそれなりだが掴みやすい。ホイールベースの長さがこのクルマの存在領域(運動性)を物語る。フロントトレッドがワイドなのは回頭性に貢献する。車重は重い。ピークパワーに頼る走り方よりもトルクを活かした走りが生きる。4速が1対1のギヤ比は歓迎できる。最終減速比に関して意見が分かれる。個人的にはもうすこし低くても(加速重視でも)良いと思う。追従性の良いサスペンションでタイヤの接地変化が少ない。レベライザーは完調なら有効であるが、デメリットも指摘されている。ASRは一般 のドライバー、少し飛ばすドライバーにはかなり有効な効き方をする。新車当時の動力性能数値は今のクルマの調子をはかる目安になる。