500E/E500は買ってはいけないクルマ(必読)

500E/E500を選ぼうとしているあなたへ。その選択は正しいでしょうか。冷静に考えましょう。最新の技術から遠いことと新車がないことを除いて、歴史的に評価が定まった車を選ぶのも良いことだと考えますが、中古車しかないというのは大きなハンデです。走った分だけ性能と寿命を減らした車であるし、その個体の調子を想定された「正常な個体」と比較して正しく評価することが難しいからです。工業製品なので製造公差の範囲内で新車時ですら多少個体差はありますが、前オーナーの手入れの仕方・乗り方・環境によってその後の車の状態(そして価格)はまさに千差万別 です。

一般的な中古車を選ぶ上での諸注意の他に、車の性格を考慮する必要があります。ハイパワー・ミディアム・セダン、そんな中途半端な組み合わせとも言える三要素をもったをわざわざ(新車で)購入した人がそのエンジンパワーの恩恵を受けることなく手放すことは極めて稀、むしろあり得ないと考えた方がいいでしょう。加えて、そういう人が必ずしも全員メンテナンスをきちんとしていたとは限らず、ろくに整備されなかった物・荒く乗られていた物・重大な事故を経験したのにキチンと直していない物・トラブルを抱えている物・各部品の交換時期が迫っている物などが存在しても全く不思議ではありません。というよりも、前オーナーが何らかの理由で手放したクルマです。

中古自動車販売店は仕入れた車を(直す直さないは別として)シビアに評価して価格を決定しています。相場より安い「極上」車が存在するはずは絶対にありません。相場よりも安い車には安い理由が必ずあります。整備記録簿はあって(かつ記録されていて)当然ですが、定期点検時に見つけられた故障以外の修理や、事故の修復の記録は残らないということも知っておくべきです。記録簿に記載されるべき点検・交換項目は、このクルマにとっては最低限度のメンテナンスです。それなのに記録簿がない・あっても記載がないと、いつ重要パーツを交換したのか分かりませんし走行距離も「不明」と考えるべきです。車のオドメーターは全くあてになりません。たとえ超過走行程度極悪?車でも、内装を張り替え外装を磨きエンジンルームや下回りをスチーム洗浄してプラスチックパーツにアーマーオールでも塗って、ペダルのゴムなんかも適当に新しくすると、我々にはもう判定不能です。過去の整備の記録を調べたら本国での数十万キロという走行記録が出てきた例もあります。いつ頃どこで登録されたのかという車の素性が店の人の話だけではなく客観的にはっきりしていること、その車自体をよく見て必ず試乗すること。経歴不明車の場合にはとくに慎重に見極める必要があります。記録簿でさえ偽造されることがあります。したがって信頼できる販売店かどうかは非常に重要なファクターです。クルマを見る前に、売ってる店売ってる人を見る。店によっては比較的安い車両価格をあげておきながら「納車整備費用」「保安基準適合作業費(並行車の場合)」などを別 に数十万円請求するところもあります。これは本来車両価格に含まれるべきものです。正規ディーラーで見積もりをもらった経験があれば、車両価格以外に本当に必要な経費が分かります。車を選ぶ前にまず店を選ぶべきです。購入後のメンテナンスをその店でちゃんと出来るかどうかも重要です。余りに遠方の店は避けた方が無難です。納車整備は、整備状態で展示している店と買い手が付いてから直す店とがありますが、これに関してはどちらが良いとか悪いとか言うことは無いと思います。

500E/E500のような古い「元」高性能車を選ぶ際に装備やで決めてはいけません。走行に関わる部分の健康状態で選ぶべきです。いくら見た目が良くても走らなかったら車ではありません。タマ数が多く新しい車種ならば色や装備も選べるでしょうが、周知のように500E/E500は本来絶対数が少なく、中古並行輸入車が極めて多く、もはや程度の良いものは極めて少数というか、ほぼ無い状態です。本当の極上車は雑誌などに掲載される前に売れてしまいます。広告で探すよりも信頼できる人に見つけてもらうのが良いかもしれません。D車なら全て良い訳でもありませんし並行車が全て悪いわけでもありません。故障に関してはある程度運です。

ゴム製パーツには寿命があります。走行に関わる部分のブッシュ・マウント類は走行距離・経年変化で劣化します。エンジン周辺は凄まじい熱のためにたくさんの部品がどんどん劣化します。ボンネットを開けたら触ることの出来るゴムパーツは全部手で掴んだり指で押したりして弾力を確かめましょう。ただし、細心の注意を払った方が良いのはバキューム系統です。熱のためにチューブが劣化しぽきぽきと折れてしまいます。そろそろどのクルマもアブナイはず。バキューム全交換はキツイです。ついでにアンダーカバーの上に洩れたオイル/フルードが無いか確認する必要があります。懐中電灯で照らしましょう。パワステ関連のトラブルが多いと言われています。重要部品については、何番目のオーナーにその交換時期が廻ってくるかは運次第ですが、当然ながら車の一生から見て無交換で済むものと済まない物があります。エアコン不良も場合によっては高額修理になるので要注意です。比較的寿命の長いフューエルポンプウォーターポンプでもあるいは交換時期があなたの番になるかもしれません。エンジン本体AT関連のトラブルがあると修理に多大な費用がかかる場合があります。ATが健康ならばシフトチェンジに要する時間はDレンジでもマニュアル操作でも極めて短時間です。アイドリングで大きな振動を感じる場合、失火があるかまたはエンジンマウントが寿命かもしれません。試乗中は五感をフルに活かして情報を収集しましょう。乗り心地(NVH)・シフトショック・直進性・旋回性(左右差がないか)・パワーは出ているか・振動や異音はないか‥ 注意する点は沢山あります。何台か試乗すればいろいろ見えてくるでしょう。例えば92モデル、93モデル、94モデルでそれぞれ乗り味は(かなり)違います。無論前オーナーまでのメンテ次第で全然違います

いすれにせよ、もはやノーメンテナンスで何年も乗れる車では絶対にありませんから、突然の出費に耐えられる経済力も必要でしょう。100万ぐらい常にプールできればとりあえず安心ですが、一度キッチリしあげてしまえばしばらくはオイル交換程度ですみます。大小なんらかの故障(実は単なる部品の寿命)は必ず起こります。修理費は割高になります。きっとあなたもこの車で飛ばすでしょうから事故に遭遇する確率も確実に増加しますし、事故を起こすと速度領域が上がっている分だけ自分も相手も物であれ人であれ被害は甚大です。

主要パーツの交換時期は実走5, 6万キロを過ぎたあたりから急増します。年式から推定して現存する500E/E500の大部分はこの距離をとっくに超過していると思われます。中には調子が悪くなったし(あるいは例えばもうじき車検だから)もう整備しないでこのまま手放しちゃえ、という車も増えてきます。買ったままの状態でも程度が良い500E/E500を手に入れたいと思ってもそれは無理。逆に言うとほとんどの500E/E500は購入後なにがしか手を入れなくてはならないということでもあります。保証がない、あるいは保証対象外の場合を考えて、車両価格や諸費用以外に補修費用として最初に数十万程度の余裕が必要です。ボディは車そのものを買い換えない限り交換するわけにはいきませんが、その他のパーツは--エンジンでさえ--交換することは出来ます、お金をかければ。長く乗るならボディ(外装という意味ではありません、骨格ですね)で選んで買ってから直していく方法もあります。望むような性能を保ちたいなら維持費はかなりかかるのでローンは組まないことをおすすめします。 店に出向くときは一人で行かないようにしましょう。クルマに興味のない人(奥さん?)と、もう一人出来れば現在500Eを好調な状態で維持している人あるいは維持した経験がある人、さらに事故車を気にする方はその区別 が付けられる人がいればベストでしょうか。

動力性能で500E/E500を越える車は沢山存在します。ハンドリングでもそうです。500E/E500を手に入れるのと同じお金で立派な新型車を買うことも出来ます。新車の方が維持費は格段に少ないし長い保証も付いています。購入の際のリスクはかなり少なくなります。

車両価格が年式・走行距離に対して割高で購入にリスクを伴いしかも維持費が高額、発表から13年を経過して最早この一台だけが突出した性能をもつとはとても言えなくなってしまった上に、程度の良い車が極端に減り中古車としての旬も過ぎたと思われる500E/E500/E500LTD。

それなのにあえて500Eを選ぶ理由はなんですか?

この問いに明確に回答できるならばこのクルマを手に入れても後悔することはないでしょう。